過去への心の旅

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


年末年始は、なぜかワーグナーにハマってしまい、「ニーベルングの指環」という楽劇の解説本を読みながら、DVDを見ていました。


この解説本がなかなかおもしろかったのですが、ワーグナーが最初に構想したのはジークフリートという英雄の死の物語だったのが、なぜこの英雄が死ななければならなかったのか、その原因を考え、過去へ過去へと物語を展開していった結果、4部にわたる長大な楽劇になったのです。


ワーグナーはヴァルキューレ(戦場で死んだ戦士の魂を天界の城へ連れて行く役割をもつ乙女)のブリュンヒルデの口を借りて、「なぜこのような悲劇が起こったのか?」と問いかけます。ジークフリートの父と母はどのような人だったのか? どのように彼は生まれたのか? 祖父は誰でどんなことを考え何をしたのか?

そのような問いを重ねていくうちに、物語の発端は、ある男がラインの3人の乙女から愛を拒絶されて権力を取ることを選び、ラインの黄金を持ち主に権力を与える力のある指輪に変え、さらにその指輪に呪いをかけたことにある、と構想します。


アニカもまた同じように、今、ここで自分がどんな人と関係をもち、どんな状況におかれているかは偶然ではないと考えます。それは、私たちの親がやってきたこと、私たちの祖父母がやってきたこと、それ以前の世代の先祖たちがやってきたこと、また私たちが過去世でやってきたことが原因で起こっていることであり、彼ら過去に生きた人たちが経験したことから生じた感情の記憶に巻き込まれているからだと考えます。


ワーグナーはまた、自著のなかで、次のようなことを語っています。

「オーケストラとは言い換えるならば、無限の普遍的な感情を育む土壌であり、この土に根ざしているからこそ、個々の演技者の個人的な感情はかぎりなく豊かに咲き出ることができる。オーケストラは実際の舞台が立脚する硬く凍りついた動かざる地面をいわば、流れるように柔らかく、感受性に富む、霊気に満ちた水面へと溶解する。この水面の下にある計り知れぬ深みには感情の海がありのままに広がっているのである。」

ワーグナーは、舞台上の登場人物たちの行動を駆り立てるさまざまなモチーフを奏でるオーケストラを、まるで過去に生きた人たちの感情が波打つ潜在意識のようにとらえています。


私たちもまた同じように、人生という舞台において、過去に生きた人たちのさまざまな感情につながり、彼らの人生を再生せざるを得ないような状況におかれていると言っていいでしょう。

私たちが、彼らの人生の再生をやめて今生の人生を自分らしく生きるには、この潜在意識の海にダイブし、先祖や過去世たちの感情を見出し、向き合い、理解し、いやす必要があります。

「私の人生になぜこのようなことが起こっているのか?」という問いの答えは、私たちに縁ある過去に生きた人たちの人生のなかにあるのです。


参考文献:
「《ニーベルングの指環》教養講座 読む・聴く・観る! リング・ワールドへの扉 」山崎太郎 (著)
ワーグナー:楽劇《ラインの黄金》 [DVD]
ワーグナー:楽劇《ヴァルキューレ》 [DVD]
ワーグナー:楽劇《ジークフリート》 [DVD]
ワーグナー:楽劇《神々の黄昏》 [DVD]
ブーレーズ/バイロイト祝祭管弦楽団