なぜ人は仲良くできないのか?

私がアニカを始めた理由は、「子どもにとって安心していられる家庭を増やしたいから」です。

なぜそんな理由で始めたかというと、私自身が育った家庭が、安心していられるような場所ではなかったからですね。

アシスタントの谷津の子どもたちはよく「やっぱり家が一番いいねー」と言うそうですが、私は自分の家でそんな気持ちにはなれませんでした。

 

といっても、親から暴力を振るわれたりしたことはありません。ただ、母と祖母の間に嫁姑問題があり、家の中に毎日イヤな空気が感じられていました。私は小学校の頃からこの家を出たいと思っていたのですが、それが実現したのは24歳のときでした。初めて就職した会社の冬のボーナスが出たので、独立できたのです。

嫁姑問題で苦しんだのは、私ではなく、むしろ母や祖母、そして間に立った父だったと思います(祖父は若くして他界したので、私は会ったことがありません)。そして祖母が亡くなった後も、今度は父と母の関係がうまくいかなくなりました。というか、もともとうまく行ってなくてよくケンカしていたのを覚えています。

したがって「子どもにとって安心していられる家庭」とは、親や祖父母ら(私は一人っ子だったのですが、兄弟姉妹も含め)家族が仲良くしている家ということになります。

 

では、なぜ家族が仲良くできないのでしょう?

今、社会では考え方の違う2つ以上のグループが敵対し合う「分断」現象が話題になっています。こうした社会的な「分断」現象も、もとはといえば家庭における「分断」がもとになっているのではないかと思うのです。なぜなら、家庭は(意識的にも無意識的にも)人間関係を学ぶ場所であり、そこで学んだ人間関係をもとに人は社会生活を送るものだからです。

家族関係に「分断」があれば、その「分断」は子どもの心の中に残り、その後の人生に反映するのは間違いありません。

 

今でこそ、私は人と生きていくことに抵抗はありませんが、アニカを始める前、いや始めた後でさえも、自分の本音を誰かにわかってもらうことに困難を感じていました。それは私が子どものときから24年もの間、本音をわかってもらうことができない環境で育ったからかもしれず、またそこでいっしょに暮していた父、母、祖母も同様に、自分の本音をお互いにわかってもらうことができなかったので、私がその影響を受けているせいかもしれません。

私はアニカを始めてからやっと「本音で話す」ことができるようになったと感じています。自分をわかってもらうためには「本音で話す」ことが何よりも重要であることもわかってきたと思います。

 

「なぜ人は仲良くできないのか?」、その理由は、誰もが「自分の本音をわかってもらえない」と感じ、そのことに強い怒りを抱きながら、その怒りを表現する場所を見つけられずにいるからではないでしょうか。

自分の本音を受け入れてもらえていないのに、相手の本音を受け入れることはできないでしょう。だから私の親や祖母は私をわかってくれなかったのかもしれません。結局、彼らも「本音の自分」を親にわかってもらったという経験をしてこなかったのでしょう。

そうした「わかってもらえない」連鎖が家系を通じて存在するので、家庭内「分断」が起こるのです。

 

自分の親から「あるがままの自分」「本音の自分」をわかってもらえないような状況が10年も20年も続いたら、私のように「コミュ障」になるのも当たり前ではないかと思うのです。

家庭に誰かひとりでも「わかってくれる人」がいたら、私はこうはならなかっただろうと思います。だから私はアニカを通じて、家庭内に「わかってくれる人」が一人でもいるような状況をつくろうとしているのです。

 

ところで、私は「コミュ障」に見えないですよね? それが私の大きな問題でもあるし、同じような経験をされた方が苦しんでいるところではないかと思います。

長くなってきたので、その件はまた今度、書くことにします。


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