心を海に浮かぶ氷山にたとえると、水面より上に出ている部分が顕在意識、水面より下の部分が潜在意識ということができるでしょう。この絵では水面より上の部分が割と大きく描かれていますが、脳神経科学の研究では顕在意識は潜在意識の100万分の1程度とも言われています。
つまり、人間の心は潜在意識優勢ということができるでしょう。衝動的にわきあがる感情の波を理性で抑えるのは難しいわけです。
さて、心の中には人生の邪魔をするような思考や感情がたくさん潜んでいます。それでは、いったいどのようにして、こうしたネガティブな思考や感情が、人の潜在意識のなかに潜り込むようになったのでしょう?
楽しい感情、うれしい感情だったら、私たちはいくらでも抵抗なく感じることができます。しかし、人生は楽しいこと、うれしいことばかりではありません。
親子、兄弟姉妹など家族から何かされて嫌な思いをしたり、結婚生活でトラブルがあったり、お舅さんやお姑さんとうまくいかなかったり、子育てでイライラしたり、仕事で上司から理不尽に怒られたり、同僚からいじめられたり、友人とけんかしたり、お金の不安があったり、自分の価値を見失ったり、人生には嫌なことがたくさんあります。
そうしたネガティブな感情を、私たちは毎日感じながら生きています。
(以下の図では、顕在意識で嫌な気持ちが感じられている状態を表現しています)。
通常であれば、そうした心にわきあがってくるネガティブな感情は、時間がたつにつれて自然に消えていくでしょう。しかし、嫌なことが何年も続いたり、ものすごくショッキングな出来事があった場合、私たちは自分の心にこみ上げてくる感情に耐え切れなくなります。そして、まるでそんなことはなかったかのように、ネガティブな感情を感じることを拒否します。
この感じることを拒否された感情が、潜在意識に潜るのです。ネガティブな感情を感じることをやめたからといって、その感情はなくなりません。ネガティブな感情は潜在意識に何十年も残って、今現在、生きている私たちに悪影響を与えることがあるのです。
自分が拒否した感情ですから、自分に悪影響があるのは仕方ないことだといえるかもしれません。しかし、私たちの潜在意識は、縁のある他者につながっています。
たとえば、竹藪の竹は、地表では1本、2本と数えることができる個別の存在のように思えますが、地中では根を共有して、まるでひとつの生命体のようにして存在しています。それと同じく、物理的な身体をもっている私たちは、一見それぞれが個別の存在のように思えますが、目に見えず手で触れることもできない心の世界では、縁ある者同士が潜在意識を通してしっかりとつながっています。
その典型例が家族です。潜在意識に潜った感情は、潜在意識でつながっている家族(特にまだ自我のさだまっていない子ども)にダイレクトに影響を与えます。なぜなら、小さな子どもは親、特にお母さんを24時間、常に感じているからです。
なぜ子どもが親のことをそんなに感じているかというと、親の苦しみをいっしょに感じて何とか助けたいと思っているからでしょう。
こうして子どもが親のネガティブ感情を幼少期にコピーしてしまい、大人になってから親と同じような経験をするのは実はよくあることなのです。