「思い込み」の外し方

私たちが人生で経験することは、偶然に起こるわけではなく、あくまで私たちが「心の底から信じていること」を反映しています。

つまり、私たちが「人生とは過酷なものである」と信じていればその通りになるし、「人生とは幸福に満ちたものである」と信じていればその通りになります。

なので、経験している現実をより良いものに変えたいのであれば、「信じていること」を変える必要があります。

どのように「信じていること」を変えるのか? それは昔、学んだコーチングでもテーマになっていました。コーチングの場合は「アファメーション」という肯定的な文をトリガー(引きがね)として肯定的な感情(アンカー)を呼び起こし体感することを習慣化することで、自分にとって都合のよい信念を心の中に構築していきます。(詳しくは、ルー・タイス著「アファメーション」が参考になります)。

コーチングの場合、自分が達成したいゴールを設定し、そのゴールをすでに達成した状態をアファメーションにするのですが(つまり現実化していないことを「すでに現実化している」と信じるため)、ゴールは顕在意識で想定するため、バランスの取れた内容にすることがなかなか難しいです。

たとえば「年収何千万円」をゴールにして達成したとしても、そのために家族関係が悪化してしまったり、オリンピックで金メダルを取ったとしても、その大きなゴールを達成した後のゴールをうまく設定できず転落してしまう、というようなことは起こりうることです。

そうしたことが起こる原因は、コーチングが生まれた欧米の社会では、主体(顕在意識)が理性的な判断をして自己を成長させる、という近代的な考え方がベースになっているからでしょう。人間の心の中には、精神分析が解明したような不合理な要素がたくさんあり、人間は必ずしも理性的な存在ではない、という観点が抜けているからではないかと思われます。

これに対して東洋的な考え方は、最初から心の中の無意識的な非合理性のようなものを世界観のうちに入れています。たとえば道教のシンボルである太極図は、世界はポジティブとネガティブなものから構成されているという考えにもとづいており、ポジティブの中からネガティブが生まれ、ネガティブの中からポジティブが生まれるダイナミックな動きを見事に表現しています。

心の中からネガティブなものを徹底的に排除し、ポジティブなもので満たそうとすることは、ネガティブを潜在意識に追いやり「なかったこと」にすることにつながり、かえってネガティブなものの作用が無意識化され、よくわからないうちに周囲でネガティブな出来事が増えていくことになるかもしれません。

言葉を換えて言えば、「都合の悪いことを見ようとしない」態度が、かえってネガティブな経験を増やしていくことにつながるかもしれない、ということです。

では、どうすればネガティブな経験を減らすことができるのでしょうか? それには、ネガティブな経験の真の原因をとらえて、その原因を無力化する必要があります。

ネガティブな経験の原因は、上でも見た通りネガティブな「信念(信じていること)」です。そして「信念」が本当のことと思えるのは、その信念を支えている「感情」があるからです。

たとえば、「自分には能力がない」という信念がある場合、その信念には「自分はダメだ」という劣等感のような強いネガティブな感情が貼りついているために「本当のこと」と思えるのです。もしそんなネガティブな感情がなければ、「能力がないなら学ぶことにより能力を伸ばせばよい」とか「ある分野における能力は多少劣っているかもしれないが、得意なものもあるはずだ」というように簡単に解決策を思いつき、実行できるはずです。

したがって、「都合の悪いことを信じていること」の本当の原因は、その信念を支える「都合の悪い、ネガティブな感情」が心の中にはびこっているからなのです。

この「ネガティブな信念」を支えている「ネガティブな感情」を処理して消してしまえば、「ネガティブな信念」は簡単に心の中から取り除くことができ、結果として「ネガティブな経験」はなくなります。

長くなってきましたので、「心の中にあるネガティブな感情を消す方法」や「ネガティブな感情は縁ある他者のものである」などの話はまた別の機会にさせていただきます。


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